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2016年3月13日日曜日

おひとり温泉の愉しみ・山崎まゆみ(光文社新書)

という本を読んだ。読みながら頻回にネットで、本に紹介されている温泉を調べたりしたので、(昼寝もしたし)、一日かけての読書だった。
 私の場合は、好んでおひとり温泉をしているわけではなく、仕方なくやっているだけのこと。
 普通はビジネスホテルなどに泊まるけれども(それと、健康ランドも大好き)、ヤフートラベルで検索をかけるときには、
「一室一人利用」
 の条件を設定しているので、稀に、「一人でも受け入れてくれる温泉宿」がヒットする。料金が高くなければ、できるだけ温泉に泊まるようにしている。料金は、できれば2食付きで1万円以下。2食付いて1万円以下というのだから、どの程度の温泉旅館かは想像できるとは思う。
 ところが、今日読んだ上の本は……一人で3万4万といった宿がザラなのである、というか、そうした高級温泉旅館ばかりが紹介されているのである。
 たとえば、最初のほうに出てくる
「熱海 ふふ」
 という温泉旅館の値段は……




 ということで4万7千円。税別だから、税込みなら5万円以上。

 とてもとても、こんな高い料金は払えない。
 山崎まゆみのこの本で紹介されている
「おひとりさま温泉旅館」
 は、まぁ、ブルジョア向けの・金持ち向けの旅館がほとんどなのである。
 だから、旅館ガイドとしては私にはまったく不向きなものである。

 もうひとつ例を挙げれば、本の中で黒沢明監督が映画脚本の執筆に籠った旅館として、

「御宿さか屋」(伊豆吉奈温泉)
 が紹介されている。
 ネットで調べると、ここも一人一泊3万円以上するのだけれども、それよりも、「クチコミ」ではあれこれと書かれているのである、悪いことも。
 たとえば、以下に楽天トラベルのサイトから、




 正月2日の宿泊だから値段が張るのも理解できるけれども、5人で20万円かかったということは、1人分では4万円になる。もちろん、正月繁忙期は「おひとり様」の客など受け入れてはくれないだろうけれども。

 5人で20万も払ってあの程度の料理・サービス、だと思うから腹も立つのである。
 私のように一人で1万前後しか使わなければ、料理やサービスがたとえ悪かったとしても、不満も出ない、こんなものかと諦めもつくというものである。
 でも、ほんの数千円で思いも寄らない素敵な宿を見つけることができたときは、ラッキーだったと思う。
 たとえば、去年の秋に秋田で泊まったサンアール。
 何故か今はヤフートラベルのサイトからは申し込めないようだけれども、以下の写真はじゃらんのサイトから。
 蒸の湯温泉で温泉に浸かった後に、そこの子宝神社の前でスマホを操作して予約を入れた温泉施設がサンアール。その日の予約だったため、夕食を申し込むことはできず、翌朝の朝食のみ。料金は税込みで5400円だったと思う。
 施設の「ちゃんとした」夕食を取ることはできないとしても、食堂はあるのだろうから、そこで何か普通のものでも食べよう、ラーメンでも蕎麦でも親子丼でもかまわない……そう思って、ナビの命じるままに車を運転した。食堂で食べられないとしても、なに、温泉近くのコンビニで弁当でも我慢するさ……と思ったのが間違いだった。
 サンアールに着いてみると、そこは野中の一軒宿で、周囲には他に何の建物も無い。
「一番近いコンビニまで10キロあります」
 とのこと。運転に疲れ切っていたので、もう、10キロ運転して10キロ戻ってくるようなことはできず(コンビニのマズイ弁当一つのために往復20キロも走るなんていうのは愚行以外の何ものでもない)、夜はカバンの中にあった(偶然!)大福餅ひとつ、だけで空腹をなだめるしかなかった
 翌朝、朝食を取ったけれども、そこで働くおかみさんたちは元気で気がきいていた。




 何よりも、温泉が素晴らしかった。地元の農家の人たちが大勢使っている「地元温泉」でもある。30代半ばくらいの、車椅子の男性が、一人で、器用に湯船に入り、また上がり、体を洗っている姿が目に入った。両脚はまったく動かないようで、下半身麻痺の人のようだった。何かの事故のために、成人してからそうした障害をもった人のように見受けられた。

 車椅子で風呂に入る人ならそれまでも大勢見てきたけれども、それは常に誰かに介助されてのことだった。初めて、一人で何もかもこなして温泉に入っている人を私は見た。彼の顔つきも、どこか平然としていて、過酷な運命をしっかりと受け止め、打ちのめされるわけでも自棄になるでもなく、たくましい雰囲気を放散させていて、偉いな、と感心したことを覚えている。もし、自分が下半身麻痺になったら、あんなふうに生きていけるだろうか……などと考えた。


 話は逸れるけれども、あれこれと温泉宿を調べて、楽天トラベルやじゃらんのクチコミを見て、一つ気が付いたことがある。

 5段階評価。
 アマゾンでも商品を5段階評価しているけれども、アマゾンは星1つ、とか、星2つ、とかのクチコミだけを選択して見ることもできる。あるいは、評価の低い順に並べて読むこともできる。
 ところが、楽天でもじゃらんでも、そういったことはできない、ようになっている。
 星5つ、星4つ、なんていう評価はどれも似たり寄ったりの文章が並んでいるので、星1つとか2つの「苦情・批判・悪口雑言」にどんなものがあるのかを知りたいのだけれども、それだけを読むことはできない。
 たとえば、ここ、ホテルオークラJRハウステンボス、のじゃらんのクチコミ。
 クチコミ数は、2850もある。
 ほとんどが星5つの評価で、星1つか2つのクチコミを見つけ出すのは、実際上不可能。2850のクチコミを全て読むためには、285回クリックする必要がある。
 これなら、クチコミを読む意味が、少なくとも私には、無い。
 苦情批判罵詈雑言の中にこそ、得てして、そのホテルの実際の姿が出ていることが多いと思うのだけれども。要するに、楽天やじゃらんなどの「日本のホテル申し込みサイト」は、ホテルに不利なクチコミ情報は、実質的に見ることができないようにする、ということでホテルへの「配慮」をしているのである。それは利用者への不利益をあからさまに推進しているということでもある。
(ハウステンボスのこのホテルを見たのは、明日私がこのホテルに泊まるからである。)






 ということで、2015年に、

「おひとり様温泉」
 で泊まったところ。もちろん、すべて1万円以下(但し、恐山温泉は1万2000円くらいだったと思う)。夕食は付いたり付かなかったり。

● 国民宿舎・土佐 厳密には温泉ではないけれども、太平洋を見下ろす展望露天風呂は素晴らしい。ここは御遍路さんが使う宿にもなっていて、一人客でも当然受け入れてもらえる。 評価4


● 猪苗代リゾートホテル スキーシーズン以外のオフシーズンならおひとり様もOKらしい。猪苗代湖を見下ろす露天風呂(温泉)は素晴らしい。部屋からの眺めも良かった。 評価4


● 肘折温泉ゑびす屋 温泉も料理もいい。混浴風呂には、しかし女性は入ってこない。評価4

(旅館で案内をしてくれた老婆の話:私はねどの女性客にも混浴風呂には入るんじゃない、っていつも忘れずに言ってるのさ……という意味のことを山形弁で、私が妙な期待を抱いて煩悩に苦しむことがないようにという「文字通りの老婆心から」だろう、楽しそう教えてくれた)

● 雫石プリンスホテル スキーシーズン以外は安いようだ。温泉は大きな(とても大きな)露天風呂のみ。岩手山の眺めが素晴らしい。 評価4


● 白神温泉・白神館(青森県西目屋村) 津軽三味線の演奏も見ることができる 公社が運営しているけれどもサービスもいい。フロントの職員たちも気さくで好印象。 評価5


● 大坊温泉(青森県平川市) 素晴らしい温泉 宿泊施設は宿舎のようだけれどもサービスは心がこもっている。夜の食事は「焼きサンマ」だったけれども、それで十分。食堂には工事関係で宿泊している人も多く、耳をダンボにして話を聞いているだけでも世間勉強になる。 評価4.5


● 恐山温泉 菩提寺 宿坊・吉祥閣 シーズン終了間際で空いていたから一人でも泊めてくれたようだ 硫黄の臭い(硫化水素?)が宿坊内でも強い ただし、この宿坊に泊まれば朝の勤行に参加できて、寺の中を見物できる 円空仏も見ることができるし、本堂に積まれている青森独特のあの人形も目にすることができる 何よりも宿坊の立派な大浴槽に感動する 評価3・5(マイナス0・5なのは、決して美味しいとはいえない精進料理しか出ないから)


● 秋田・千畑温泉・サンアール 大浴場は壁一面の巨大なガラスを境に自然の風景があり、露天風呂よりも情緒がある 評価4・5


 といったところで、どれも安い温泉旅館・宿坊。でも、すべてが源泉かけ流しの素晴らしい温泉である。一泊4万円の高級旅館に負けない、と思う、と負け惜しみを記しておく。



作成途中  不老不死温泉