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2015年1月1日木曜日

雨に消える涙

 まだ十分な量の雪を纏っている羊蹄の山頂が雲から突き抜けて紺青の空に浮かんでいた。
 その羊蹄山を見上げることのできる絶好の位置に立つ有島記念館、に私は車を駐めた。
 ここに立ち寄ったのは、ほとんど偶然のことだった。
 函館美術館で興味深い展覧会を観終えたあと、ロビーに並べれていた、全国各地の展覧会の宣伝パンフレットを、ふと見てみたのである。その中にあったパンフレットに、有島記念館で「若手作家たち」の絵画作品が幾つか展示されているということを知ったのである。
 記念館があるニセコ町は札幌への帰り道に通るところである。寄ってみようか……思わぬ「拾い物・拾い絵」というものを目にすることができるかもしれない、そう思ったのである。

 実際に記念館を目にすると、@@@
 すると、痛みにも似た記憶が胸を通り抜けて行った。
 二十数年前、この記念館に美砂子と一緒に訪れたことを思い出したのである。あれ以来、一度もこの記念館に足を向けたことはない。もちろん、有島武郎に私は興味がないということもあったけれども、それよりも大きな理由は、あの日の美砂子とのやりとりの場所に近づきたくない、ということにあった。
 あまつさえ、その年の秋、私は美砂子を有島武郎と波多野秋子が縊死した軽井沢のあの場所に連れていったのである。

 だから、記念館を見るということは、

ホテル音羽の森
ナショナルジオグラフィックを読んでいた美砂子 疲れて先に寝てしまっていた私
何かイスラエルかどこかの記事を読んでいた美砂子 それから話は宗教のことになる
死んだ恋人の友人を慕っていた私の友人の話 希望があれば生きていけること

モネの日傘の女 見上げる
美砂子がピアノを弾いているのを 見上げる