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2014年4月25日金曜日

2014年ダメ翻訳家大賞を金沢泰子が受賞

ニーチェが泣くとき 西村書店刊 金沢泰子・訳

 この金沢泰子という女性は、医学関連の本も多数翻訳しているのだけれども、これほどダメな翻訳者だとは思っていなかった。津田塾の大学院で修士課程を修了しているそうだけど、学歴と翻訳の腕は無関係のこともあるのだろう、こうして。

<金沢泰子:1952年生。津田塾大学大学院修士課程修了。新潟国際情報大学講師。>

 何よりも呆れたのが、原書ではイタリック体にしてある部分が多数あり(1ページに2、3ヵ所はイタリック体となっている)、イタリック体にしている深い意味がどの場合にもあるのだけれども、金沢泰子はそれらすべてを無視して(普通なら、傍点を振るとか、ゴシック体にするとかするものである)、のんべんだらりんと訳している。そのため、ヤーロムが何を問題にしているのか、何を強調したいのか、翻訳では全く理解不能となっているということである。

 もちろん、「純粋な誤訳」にも事欠かない。
 最初の3章だけは「付き合って」、ところどころ誤訳を紹介しようと決めた。
 もちろん、この「作業」は、とても辛気臭くて、嫌なものである。だから、少しずつ記載してゆくことにする。


 内科の開業医でウィーンの名士であるブロイアー(41歳)の妻はマチルダ(30代半ば)。そこに足繁くやってくるのはブロイアーの後輩で医学生のジークムント・フロイト(20代半ば)。フロイトはマチルダに憧れており、自分のフィアンセもマチルダに似たような女性を選んでいるほど。

 ブロイアーはヒステリー症例の女性の研究治療に夢中になり、マチルダにその女性との仲を疑われて、今では夫婦の間に隙間風が吹いている。フロイトはマチルダに弟のように・息子のように可愛がられていて、親しげに話ができる仲であるけれども、もちろん不倫とかそういった関係ではない。
 その日もフロイトがブロイアーの家に夕食を摂りに、そして医学的な話をブロイアーと続けるために来ている。フロイトが風呂に入っている間に、ブロイアーは仮眠を取ろうとして横になる。

P35

 Lying on his bed, Breuer could not sleep for thinking about Mathilde confiding in Freud so intimately. More and more, Freud seemed like one of the family, now even dining with them several times a week.(snip)
 So what, Breuer asked himself, if Mathilde does tell Freud of my disaffection? What difference does it really make? (snip) 
 Without doubt Freud's presence in the household was a good thing; Breuer knew that he himself was too personally distracted to supply the kind of presence his family needed.

HP56

 ベッドに横になってもブロイアーは眠れなかった。
 フロイトにマチルダのことをうちあけたのは気をゆるしすぎたろうか。ふろいとは家族の一員のような気がしていた。週に数回は夕食をともにするこの頃はなおさらだ。(中略)
 もしマチルダがフロイトに夫に対する不満をもらすとしたら? そうしたところで、何の変わりがあるだろう。(中略)
 家のなかでフロイトが大切な存在だということに疑問の余地はない。ブロイアーにはわかっていた。自分は家族が必要としている存在には程遠い。

 素晴らしい! この短い1ページの文章の中に、呆れる誤訳が溢れていて、いかに金沢泰子が寝惚けながら翻訳していたか、説得力を持って証明できる。


Lying on his bed, Breuer could not sleep for thinking about Mathilde confiding in Freud so intimately. 
(誤訳) ベッドに横になってもブロイアーは眠れなかった。フロイトにマチルダのことをうちあけたのは気をゆるしすぎたろうか。
(正しい訳)……マチルダがフロイトにとても親しげに話をしている(秘密を話している)のを考えると、ブロイアーは眠ることができなかった。

if Mathilde does tell Freud of my disaffection?
(誤訳) もしマチルダがフロイトに夫に対する不満をもらすとしたら?
(正しい訳) もしマチルダがフロイトに私の(ブロイアーの)不実(他の女に入れあげていること)を実際に話したとしたら?

 Breuer knew that he himself was too personally distracted to supply the kind of presence his family needed.
(誤訳)ブロイアーにはわかっていた。自分は家族が必要としている存在には程遠い。
(正しい訳) ブロイアーにはわかっていた。自分が個人的なことであまりに気を奪われているので(例の女に入れあげているので)、自分の家族が必要としているような類の家庭内での存在(父親としての確固たる存在)というものを与えることができないのだ。


 内容を何も理解していないから、こんなバカげた誤訳を延々と続けているのである。






P58 Vienna's wind and wet gloom poisoned him, Nietzsche said. His nervous systme cried out for sun and dry, still air.


HP89 ウィーンの風と、じめじめした陰鬱さはひどくこたえると彼は言う。彼の神経系は太陽と乾燥、そして空気を求めて叫んでいた。


▲:still life を「もっと生活を!」と訳すような愚かさ。内容を理解できていないから、堂々と誤訳していることは理解できない。

HP112 彼は胸のふくらみをながめた。肋骨のうえにあるふくらみ……いつか吹きさらしの浜辺で巨大な魚の死骸に行きあたったことがある。魚の脇腹は部分的に腐り、日光にさらされてあらわになった肋骨が彼をにらんでいた。


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