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2013年6月30日日曜日

気になったニュース 警察腐敗

愛知・警官脅迫:「内通者」揺れる県警 山口組系に漏えいか 警部脅迫で証言続々
毎日新聞 2013年06月30日 東京朝刊

 ◇「最高2000万円で買収したと聞いた」

 愛知県警が揺れている。暴力団捜査を担当していた警部を電話で脅したとして脅迫罪などに問われた男の公判で、「県警に内通者がいた」との証言が相次いでいるからだ。男は、指定暴力団山口組のトップ2人の出身母体である弘道会(本部・名古屋市)と密接な関係にあったとされ、日本最大の暴力団に捜査情報が漏れていた可能性が出ている。

 「警察に内通者がいると確信した」。4月23日、脅迫の被害者とされた警部は名古屋地裁の証言台で断言した。名古屋市を中心に展開する風俗店グループ「ブルー」を率いる佐藤義徳被告(55)の公判でのことだった。

 起訴状などによると、佐藤被告は、自宅新築計画が住民反対運動で進まないのは県警組織犯罪対策課にいた警部の妨害だと邪推し、2010年7〜8月、警部の自宅や携帯電話に「娘がどうなっても知らないぞ」などと5回にわたり、部下を使って脅迫電話をかけたとされる。警部は、ブルーを弘道会の資金源とみて捜査していた。

 警部の証言によると、電話を掛けてきた男は捜査班の名称を挙げ、「10日くらい前(家族を守るための)保護願を(県警に)出したでしょ」などと、県警幹部ら数人しか知らない情報を語った。「警察の動きは全て分かっているぞ、という脅しだと理解した」と警部は振り返った。

 5月28日には、元県警捜査員(10年退職)が検察側証人として出廷。風俗店への摘発情報を佐藤被告に教える代わりに、現金などを受け取るようになったことを認めた。ただ警部によると、脅迫があった当時、元捜査員は捜査情報を知る立場ではなかったという。

 「『警察の人もお金で買える。一番ランクの上の人で2000万円で買った』と(佐藤被告が)言っていた」と、佐藤被告と交際していた女性も同日の法廷で証言。複数の警察官が買収されていた可能性が浮上している。

 県警は10年に「弘道会集中取締総合対策本部」を設置し、同会ナンバー2など有力幹部を次々に逮捕、資金源とみられる企業を積極的に摘発してきた。県警幹部は「現役警察官の中に内通者がいる証拠が得られれば、捜査に乗り出す」と語気を強める。

 愛知県弁護士会で民暴委員会委員長を務める渡辺一平弁護士は「一部の警察官による癒着が、暴力団排除の機運をそぐことになりかねない。徹底的にウミを出し切ることが必要だ」と指摘する。

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 ■ことば
 ◇愛知・警察官脅迫事件

 愛知県警は2011年以降、県警警部の家族構成や電話番号を調べたとされる探偵業者、個人情報を不正に流した司法書士、携帯電話販売店店員らを摘発。風俗店グループの実質的経営者、佐藤義徳被告を警部に対する脅迫容疑で今年1月逮捕した。5月には、脅迫電話の実行役に逃亡を指示したとして、佐藤被告の顧問弁護士の元検事を犯人隠避容疑で逮捕。一連の逮捕者は30人を超えた。佐藤被告は、これまでの公判で起訴内容を否認している。



警部脅迫:主導の経営者、認める方針 保釈目的で
毎日新聞 2013年06月29日 03時00分(最終更新 06月29日 04時07分)

 愛知県警警部に対する脅迫事件を主導したとされる風俗店グループ「ブルー」の実質的経営者、佐藤義徳被告(55)=脅迫罪などで公判中=と弁護士らが、7月3日の名古屋地裁での公判で事件への関与を認める方向で最終検討していることが、関係者の話で分かった。公務員や携帯電話店員、警察官などが逮捕される一連の個人情報漏えい事件摘発の発端となった脅迫事件が、大きな転機を迎える可能性が出てきた。

 複数の関係者によると、佐藤被告は起訴内容を認めて保釈を求めたいなどの趣旨を弁護士に伝えたという。

 佐藤被告は今年1月に脅迫容疑で逮捕された後、一貫して関与を否定。3月の初公判でも「脅迫はしていない。指示や共謀もない」と全面否認した。

 だが今月に入り、脅迫電話の実行役とされる風俗店グループ元幹部の青木公司被告(43)が脅迫罪で起訴され、青木被告を逃亡させたとして犯人隠避容疑で逮捕された別のグループ元幹部の男(38)が容疑を認めるなど、佐藤被告を取り巻く状況が変化している。

 佐藤被告は今月21日、青木被告の逃走を指示したとして犯人隠避罪で追起訴された。7月3日の公判では同罪の起訴内容の認否が予定されており、佐藤被告側は脅迫罪だけでなく、犯人隠避罪についても認める方向で検討しているという。

 起訴状などによると、佐藤被告は名古屋市内での自宅新築計画が住民の反対運動で進まないことを、同グループが山口組弘道会の資金源とみて捜査していた県警組織犯罪対策課の警部の妨害と邪推。青木被告らに指示して2010年7〜8月、警部の自宅や携帯電話に「娘がどうなっても知らないぞ」などと5回にわたり、脅迫電話をかけさせたとされる。


汚れたバッジ:警官脅迫事件/上 組長から祝いの花
毎日新聞 2013年06月01日 中部朝刊

 敏腕弁護士の顔に困惑の色が広がっていた。2011年6月中旬、名古屋市中区丸の内の城(たち)綜合(そうごう)法律事務所。市街を一望する14階の応接室で、あるじの城正憲容疑者(65)は「参ったな」と繰り返した。「警察官を脅しているんでしょ。みっくんには逃げてもらうよ」。その言葉を聞いた風俗店グループ「ブルーグループ」幹部(当時)の山口修容疑者(38)は、グループを率いる佐藤義徳容疑者(55)からの指示だ、と思った。事務所を出ると、グループ幹部(当時)の「みっくん」こと青木公司容疑者(43)の携帯電話を鳴らした。「逃げろと言ってますよ」−−。関係者が明かした今回の犯人隠避容疑事件の内幕だ。

    ◇

 城容疑者は愛知県愛西市出身。1970年に中央大法学部を卒業後、79年に検事に任官した。大阪、東京地検を回った後、92年の名古屋地検を最後に秋霜烈日の検察官記章を置き、ひまわりの弁護士バッジを付けた。

 経歴を武器に開業早々、複数の大手企業と顧問契約を結ぶ。「僕ほど多くの顧問企業を抱えている弁護士は、名古屋にはいないでしょ」。かつて、親しい記者にそう話したことがある。刑事弁護も積極的にこなした。05年には背任罪に問われた地方銀行の元頭取の主任弁護人を務め、無罪を勝ち取った。

 ただ、黒い評判が付きまとった。「暴力団関係者の弁護ばかりしている」

 事務所が現在の場所に移った97年ごろ、所用で訪れた知人は目を疑った。移転祝いの花に大物暴力団組長の名前が記されていたからだ。城容疑者に水を向けると「こんな人にまで花をもらっちゃってねえ」。うれしそうに話したという。

 佐藤容疑者との接点が最初に確認できるのもその頃だ。同年に脱税事件で在宅起訴された佐藤容疑者の弁護人を務め、99年に設立された佐藤容疑者の会社の監査役に就任した。

    ◇
 城容疑者を知る弁護士は「一般論」と前置きした上で、「捜査経験や人脈が豊富なヤメ検(検事上がりの弁護士)は、反社会的勢力にとって味方につけたい存在。刑事弁護をやっているうちはいいが、こうした勢力の民事訴訟を引き受けて金が入ると、取り込まれてしまう人もいる」と指摘する。こうしたヤメ検の存在は、石油卸商社から約179億円相当の約束手形をだまし取ったとして実刑が確定し、「闇社会の守護神」と呼ばれた田中森一(もりかず)・元検事(69)が関与した「石橋産業事件」でクローズアップされた。

 佐藤容疑者が風俗業界での地位を固めつつあった03年、城容疑者の名が県内の長者番付に載った。納税額は約3453万円。医者や会社役員が居並ぶ中、弁護士でランクインしたのは1人だけ。表と裏にありながら、2人は軌を一にするように、それぞれの高みに立とうとしていた。

汚れたバッジ:警官脅迫事件/下 「更生に尽力」異例発言
毎日新聞 2013年06月02日 中部朝刊

 異例の光景だった。

 「被告人が反社会的勢力と完全に決別できるよう、尽力する」

 2012年3月、名古屋地裁。指定暴力団山口組弘道会(本部・名古屋市)の幹部と共に逮捕され、詐欺罪などに問われた風俗店グループ「ブルーグループ」の実質的経営者、佐藤義徳容疑者(55)の公判で、弁護人である城(たち)正憲容疑者(65)自身が、更生を手助けすると誓ったのだ。法曹関係者は「普通は家族が受け持つ役回り。2人の親密さが表れていた」と指摘する。

 当時、水面下では愛知県警警部に対する脅迫事件の捜査が進んでいたが、決定打に欠けていた。脅迫電話をかけたとされる元グループ幹部の青木公司容疑者(43)が、行方をくらませていたことが影響していた。脅迫事件が立件に至らない中、同月末に言い渡された佐藤容疑者の判決は懲役2年6月、執行猶予4年。2人にとっては「勝訴」と言えた。

    ◇

 佐藤容疑者の実業歴は1983年の金融業にさかのぼる。不動産業を経て、風俗業界に進出したのは92年。名古屋の繁華街である今池、池下、そして栄。短期間で業容を拡大し、最盛期には数十店舗を擁する一大グループを築き上げた。売り上げは、年60億円を超えていたともいわれる。

 これまでの裁判で、佐藤容疑者の力の一端が垣間見えたことがある。証言台に立った県警の元警察官は、佐藤容疑者の買収に応じ、摘発などの捜査情報を流していたことを明かした。脅迫事件で事情を聴かれた際、当初は警察への協力を拒んでいた女性証人は「佐藤容疑者が怖かったから」と理由を語った。

 しかし警部脅迫を発端に、携帯電話会社や公務員など個人情報漏えいルートの摘発が次々に進むと、その力に陰りが差し始める。グループの関係者たちが重い口を開き始めたのだ。今年1月、脅迫容疑が立件され、もう一つの容疑も明るみに出る。

 「弁護士が犯人の逃亡を指示していたようだ」

    ◇

 法律家と実業家。別々の道を歩んできた2人の軌跡がいつ交わり、深まったのかは明確ではない。ただ行き着いた先は同じだった。

 <5月31日>

午前8時27分 城容疑者逮捕

午前8時45分 佐藤容疑者逮捕

容疑 青木容疑者を逃走させた犯人隠避