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2013年5月23日木曜日

ケント・ナガノ ワーグナー

ワーグナーのすべて 堀内修(平凡社新書・2013)
(P23~)
 幕が下りると盛大な拍手が起こった。大成功だったのか?
 ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場で、2009年の7月、ミュンヘン・オペラ祭の初日に《ローエングリン》の新演出上演が行なわれた。当時音楽監督だったケント・ナガノが指揮し、イギリスの演出家リチャード・ジョーンズが演出する上演で、ローエングリンをヨナス・カウフマン、エルザをアニヤ・ハルテロス、オルトルートをミヒャエラ・シュースターが歌った。力の入った上演だった。
 ミュンヘン出身のカウフマンは、すでにスターになってはいたが、ミュンヘンでの人気はこれから、という時期だった。ハルテロスは実力ある歌手からスターになろうという時期だ。この二人がすばらしく歌い、ほかの歌手たちも大変充実していたし、ナガノの指揮も予想以上で、演奏の出来映えは圧倒的だった。
 何しろ注目の上演だったので、劇場が満員になるという程度ではすまない。パブリック・ビューイングとして歌劇場前の広場にスクリーンが設けられ、雨にもかかわらず広場を埋めた大勢の人たちが、傘をさしながら実況中継される映像を見た。
 《ローエングリン》はミュンヘンにとって特別な作品だ。初演されたのはヴァイマールだが、ミュンヘンで、のちのバイエルン王ルートヅィヒニ世が聴いた。感激したルートヴィヒは王になるやいなや、ワーグナーをミュンヘンに招く。そしてワーグナーは王のために《口Iエングリン》上演を監督した。白鳥は王のシンボルであり、ヴィッテルスバッハ家のシンボルでもある。白鳥の騎士の本徳地はミュンヘンでなければならなかった。
 ナガノ指揮の演奏は熱狂的に迎えられた。